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×レビュー:デカルトの密室

410477801Xデカルトの密室
瀬名 秀明

新潮社 2005-08-30
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『我思う、故に我あり(コギト・エルゴ・スム)』という17世紀の哲学者ルネ・デカルトのこの言葉を、一度も耳にしたことがないという人は恐らくいないだろう。デカルトは少しでもその存在に疑いのあるものを全て偽とし切り捨てていった結果、『確かなものが何一つない世界の中で、唯一確かなのは今考えている自分自身だけだ』という結論に達し、このコギト命題に辿り着いた。

この本の一つの大きなテーマとして、カギカッコつきの〈自分〉で表される、〈他者〉とは違う唯一無二の〈自分〉というものが挙げられる。〈自分〉は常に自らの頭の中に存在し、あたかも劇場を見るかのように目から入ってくる映像、耳から入ってくる音、皮膚から伝わる感覚を得、物を考えている。そしてその劇場から永遠に抜け出すことはできない。これこそがデカルト劇場と呼ばれるものであり、タイトルにもなっている『デカルトの密室』の一つだ。
一つ、と言ったのは、この作中には他にも2つ、合わせて3つの密室が順番に出てくるからだ。上記の『脳の密室』はその2番目にあたる。つまり、僕たちは3重の密室に常に囚われてしまっているということだ。そしてそこから抜け出そうと足掻く姿が、物語の大きな核の一つとして据えられている。
もう一つのストーリーの核は、『知能』だ。冒頭で辞書からの引用として提示されている『知能』の定義とは『環境に適応し、新しい問題状況に対処しようとする知的機能・能力』だが、そう言われても非常に曖昧でイメージしにくい。知能とは人間にしか備わっていないものなのか?動物や昆虫や植物は持たないのか?そして機械に知能は宿るのか。その答えを求めるため、読者はケンイチという名のAIの視点から世界を見ていくことになる。

思春期の頃に一度考えたことはないだろうか。『自分』とは果たしてなんなのか、『自己』と『他者』を隔てる境界は何なのか、なぜ『自分』は自分の中から、自分の目を使って世界を見、自分の脳を使って物を考えるのか、さらに言うと『他者』にも本当に自分と同じような『自分』が存在しているのだろうかと。
結局その答えを得られることはなく、暗黙のうちに『他人にも自分と同じような自意識・自我がある』という前提を立てた上で僕たちは日常生活を送っているわけだが、それは結局デカルトの密室から抜け出そうとする抵抗をただあきらめてごまかしたにすぎない。『密室の中にいてもそこを密室と意識しなければ密室の中にいないのと同じ』というわけだ。
この本を読んでいて思い出したことがある。かなり前、ドラえもんを見ていて、のび太が分身するという道具が出てきたときのことだ。学校の宿題としずかちゃんの誘いの板ばさみにあったのび太が、ドラえもんに出してもらったその道具(名前は忘れた)を使うと、のび太は物質的な密度が半分になるが2人に分裂する。一人がしずかちゃんと遊び、もう一人が残って宿題をするというわけだ。
そのストーリーが最終的にどうなったかは覚えていないが、のび太は分裂を繰り返しどんどん密度が薄くなっていったのは覚えている。そこで当時の僕は思った。果たして、分裂してできたのび太Aとのび太Bは、分裂する前のオリジナルのび太と全く同じであると言えるのだろうか?また、同じであるとするなら“どちらののび太が”オリジナルと同じなのだろうか。
のび太AとBは当然感覚を共有してはいない。意識も共有しない。完全に独立している。記憶、能力、身体的特徴は全く同じだが、同一の〈自分〉を持っているというわけではない。AはBの考えていることはわからないし、逆も同じなのだから。果たして、そののび太はクローン人間とどう違うのだろう。

この本では、フランシーヌという女性が第一、第二の密室から脱出することに成功する。“開放”された彼女がどのような感覚を得たのか僕たちが想像するのは難しいが、それでも彼女は『未だ密室の中にいる』という。そしてAIケンイチもストーリーが進むにつれて成長していく。
その結末は、できるなら自分の目で見てもらいたい。

【関連サイト】
新潮社 - デカルトの密室特別講義 瀬名英明
http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/477801-X/kougi.html
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